HYKLYF|人生を豊かにするストーリーを宿したULガレージブランド

アメリカでは、個人のハイカーが自らの経験をもとにギアを作り販売しているケースが数多くあります。大量生産ではなく、実際のフィールドでの課題解決から生まれたアイテムには、どこか特別な力があります。

私が HYKLYF(ハイクライフ)と出会ったのも、そんな「個人発のギア」のひとつでした。ある日、Etsy というハンドメイドマーケットプレイスのサイトを眺めていたとき、偶然目に留まったのが HYKLYF の製品です。

USハイキングカルチャーのトレンドから生まれた|HYKLYF

アメリカのハイキング文化は、広大な自然環境と地域ごとの文化的背景の違いによって、多様でユニークなスタイルが生まれています。

そんな中でも共通して広がっているトレンドのひとつが、「Smart Water」や「LIFE WTR」といった空のペットボトルを水筒として再利用するスタイル。軽く、手に入れやすいので、多くのハイカーが愛用しています。

さらに近年注目されているのが、「コールドソーキング(Cold Soaking)」 という新しいスタイル。乾燥食品を加熱せずに常温の水で戻す調理法で、ストーブや燃料を持ち歩く必要がなくなるというものです。特にこの用途でよく使われるのが、Talenti のアイスクリーム容器。軽量で再利用できるため、多くのハイカーに支持されています。

HYKLYF は、こうしたトレンドにいち早く注目し、軽量のラベルを取り付けることで使い心地を一段階引き上げるという、とてもユニークな製品を生み出しました。そして何よりも驚かされるのは、その圧倒的な軽さ。「どこにでもあるようなアイテム」が、少しの工夫で驚くほど実用的に変わる。そんなアイデアに魅了され、私は HYKLYF の魅力に強く惹きつけられました。


LIFE WTR のボトルと Talenti アイスの空き容器を並べた様子

LIFE WTR (Water) やTalenti のアイスはアメリカではいわゆるプチ贅沢品のジャンル。だから容器もこだわったデザインでおしゃれ、そして軽い。

 

働くために生きるのではなく、自分らしく生きるために働く

すべての物語には始まりがあります。HYKLYF の創業者 Matt Oyen は、ハイキングの中で直面した課題を解決するため自らギアを作り始めました。市販品では満たされないニーズを、自分の手で形にしたのが始まりです。

「ハイキング中に自分が抱えた課題は、きっと他の人も同じように感じているはずだ」

そう考え、試作していたギアを一般に公開したところ、多くの共感を呼び、HYKLYF はブランドとして歩みを始めました。ブランド名 HYKLYF は Hike Life の略。「Work to Live, not Live to Work(働くために生きるのではなく、自分らしく生きるために働く)」という Matt の哲学が込められています。

アメリカの文化では仕事優先が一般的ですが、Matt にとっては人生を豊かにするハイキングこそが本質。日本でもそうですが、多忙な日常のなかで「自分らしく生きるため働く」という価値観は、多くの人が共感できるテーマだと思います。そんな、言わばカウンターカルチャー的な発想のもとに生み出された製品だからこそ、私の心を強く動かしたのだと思います。


ウォーターボトルに LIFE WTR などの空きボトルを再利用してトレイルを歩くハイカー|HYKLYF の原点

HYKLYF の原点はトレイル。文明から離れた場所で本当に役立つものだけを形にしている。


日常的に何度でも使いたくなるようなシンプルなアイテム

HYKLYF を象徴する最初の製品が Pika Bowl(ピカ・ボウル) です。このボウルは、Matt がほぼすべてのハイクに連れていく愛犬 Pika のために生まれました。

「軽量で折りたためて、耐久性もあり、犬が快適に使える」――そんな条件をすべて満たすボウルを探していましたが、市販のハイキング用ドッグボウルにはどうしても満足できるものが見つからなかったのです。

Pika Bowl は、当初は愛犬のためのものだったはずが、やがて「人間にとっても非常に便利な道具」であることが分かります。浅い水場で水をすくったり、簡易カップとして使ったり。今ではむしろ人間用として購入する人の方が多くなりました。

新しい製品を開発するとき、Matt が重視するのは「重量・耐久性・デザインのバランス」。
いくら軽量でも、数回の使用で壊れてしまうのでは意味がありません。日常的に何度でも使いたくなるようなシンプルさと実用性―その両立こそが HYKLYF の哲学なんです。

私自身、初めて HYKLYF に惹かれたのもこの Pika Bowl でした。
わずか 8g、1mm ほどしかない薄さでありながら、計量カップやコップなどさまざまな道具として使える多用途性。そして、シエラ山脈をモチーフにした印象的なデザイン。当時はまだハンドメイドでステンシルのようにプリントされており、その「手作りの温度感」もまた私の心を掴んだのです。

 

HYKLYF Pika Bowl の制作風景|計量シートや道具を並べた作業台

ピカ・ボウルは試作と数シーズンにわたるフィールドテストを重ねて理想の形にたどり着いた。

 

ハイキングは心を癒し、思考を整理し、人生を見つめ直す手助けとなるもの

Matt が何よりも大切にしているのは、まだ歩いたことのない新しいトレイルを進み、未知の景色に出会うことです。日の出とともに歩き始め、日没までできるだけ遠くまで進む。その中でループトレイルを見つけられれば、より理想的なハイキングになると語ります。

美しい景色に出会えば立ち止まり、心惹かれるものがあれば写真を撮る。そのスタイルのほとんどはソロハイクですが、愛犬 Pika はいつもそばにいます。彼にとって、その時間はとても大切であり、ハイキングは単なるアウトドア活動ではなく精神的な営みでもあるのです。

「自然の中で感じるスピリチュアルなつながり」

この感覚は Matt にとって、心を癒し、思考を整理し、人生を見つめ直す手助けとなってきました。ときには人生の暗い時期を乗り越える支えにもなったといいます。

 

Matt 氏の普段のハイキング装備例
Matt がハイキングで携行する装備は、とてもシンプルかつ実用的です。

バックパック / 浄水器+浄水タブレット(予備) / 小型ファーストエイドキット / 座れるクッション / バスルームキット / 衛星通信端末(ZOLEO) / スマートフォン / ヘッドランプ / 日焼け止め・虫除け / 防寒着(緊急ビバーク用) / レインウェア / Pika Bowl / ウォーターボトル+Bottle Genius

泊まりのハイクではさらに、テント / スリーピングバッグ / スリーピングパッド / クッカー類 を加えています。

森のトレイルで愛犬Pikaと歩くハイカー|HYKLYF の原点

ブランド創設のきっかけとなった愛犬Pikaとともにハイキングを楽しむ Matt。

 

PIKA BOWL

Pika Bowl (ピカ・ボウル)の一番気に入っている点は、とても軽くて小さいので持っていることを忘れてしまうほどなのに、実際には非常に役立つため、家に置いていく理由が全くないことです。一度持っていくのを忘れてしまったことがありましたが、その日はとても苦労しました。浅い水たまりから水を汲む必要があったのですが、Pika Bowl がないと本当に大変で、とても喉が渇いていたのです。

💡 Tip: トレイルで使う前に、家で何度か広げて形をなじませておくと、すぐに使いやすくなります。 

👉 HYKLYF Pika Bowl|商品ページはこちら

TARCIT ロゴ入り限定カラーの Pika Bowl に水を注ぐ様子|軽くて薄い折りたたみボウル

思わずポケットやバックパックに入れたまま忘れてしまうほど軽くて薄い Pika Bowl。前面にTARCITのロゴを印刷を印刷した当店限定カラー。

 

BOTTLE GENIUS

Bottle Genius(ボトル・ジーニアス) を開発したきっかけは、乾燥食をリハイドレーションする際に水を計量するためだけに余計な道具を持ち歩くのが嫌になったからです。「すでに持っている水ボトルを計量器として使えないだろうか?」――そう考えて生まれたのが Bottle Genius です。一番気に入っている点は、すでに必ず携行しているボトルに装着でき、重量もかさも増やさないこと。

💡 Tip: ボトルに正確に貼り付けるほど、乾燥食のリハイドレーション時に精度が高まります。

👉 HYKLYF Bottle Genius|商品ページはこちら

HYKLYF Bottle Genius|セットアップ前の計量シールと、セットアップ後のLIFE WTR ボトルを並べた画像

セットアップは空のボトルに118ml(4oz)の水を入れて水面の位置に合わせてシールを貼るだけ。間違えて剥がしても粘着力がほぼ落ちないので安心して貼り直せる。

 

E-Z KEY

ある朝、ベアキャニスターから朝食を取り出そうとしたときのことです。普段より気温が低く、プラスチックのフタが硬くて柔軟性がなく、さらに自分の指もかじかんでいました。その組み合わせで蓋を開けるのがとても大変でした。お腹が空いていたのもあって、状況はさらに悪化…。「これは何とかしなければ」と思い、そこから E-Z KEY の開発が始まったのです。

💡 Tip: 私の失敗から学んでください。E-Z KEY をベアキャニスターの中に入れてロックしないでください。 中に入っていても、役には立ちません。 

HYKLYF E-Z KEY を使ってベアキャニスターの蓋を開ける様子|実際のトレイル環境で試験されたアイテム

E-Z KEY も実際にトレイルでの環境での試験を重ねて製品化に。日本ではベアキャニスターの使用率はかなり低いが、個人的にはグラフィックがかなり好みのアイテム。

 

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雪渓とエメラルドブルーの湖を望む山岳風景|HYKLYF 創設者のお気に入りの景色
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